カナスピカ感想

今回講談社からの一般文芸ということもあり、どういう方向性で来るんだろうと楽しみにしていましたが、秋田禎信らしからぬ(?)とても爽やかな物語でした。主人公が普通の中学生ですしね。物語はほとんど加奈の視点で描かれ、加奈自身は中学生らしく振る舞います。そのため、カナスピカ自体はSFな存在ですが、物語からあまり現実感が失われていないように感じます。これまでの秋田作品と比べても格段に登場人物に共感しやすいタイプではないでしょうか。読後感も良いので、ぜひとも色んな人に読んでもらいたいですね。(ファン心理ですが)


以下、ネタばれを含んだポイント感想です。


・個人的に秋田禎信の書く文章で好きなのは地の文、特にモノローグです。本作でも、抑え気味ではありますが味わうことができますね。森の中とか。
・遼子って結構大きい存在ですよね。学校でのエピソードは彼女無しには語れません。物語全体でもキャラクター性の強い人物だと思います。「さーかーまーきー」とかもうね。というか、一般文芸ということでそれまでできるだけ実写的な読み方をしていたのに、彼女が出てきた途端一気に漫画的なイメージに変わってしまいました。
・終盤も終盤、「距離」という単語が出てきましたが、熱心な秋田ファンならすぐピンとくるのでは。最近の秋田作品には大なり小なり流れているテーマだと思っていますが、本作でもやはりそういった要素が少し出てきました。
・二人の名前が似ている点については触れられていませんでしたが、何か元ネタがあるとか、隠れた繋がりなんかがあったりするのでしょうか。
・父親が出てこないと思ったら海外に単身赴任していたんですね。最後に加奈の成長と絡めてフォローされてるのが良いですね。


秋田氏は最近色々と新しいことにチャレンジしているとのことで、今度も動向が楽しみです。
秘密のお仕事とやらがまだいくつかあるようですし。(ところでパノの続きはまだかー)